やわらかい ぱん

焼き肉はホルモンが好きです。みなさんはどうですか。

17年前のシャツ

昔わけあって両親が別居し、母が越してきて、同じマンションの違う部屋に住んでいたころがある。

 

その頃摂食障害も患っていて、後先考えず一日4箱くらいタバコを吸い、シケモクも吸い、唇は荒れ、声が出ない。さらには部屋でコンクリを固めて立体作品を掘っていて、粉塵まみれ。粉塵の部屋で簡易ベッドを出し、暮らしていた。

 

と、書くと何だか世も末感がすごいが、あまり世も末感もなく、毎日プレステで「俺の屍を越えてゆけ」をプレイしたり、合成で出来たキャラクターの絵を描いたりして、まだ、最終的に詰んでいない状態だった。その後、「はっ、私はいい歳して何を…」と気づく時がきて、そこから本格的に詰み、ようやく社会に出るわけですが……(黒歴史)。

 

その頃母が買ってくれた、チェックの半そでのシャツ。縫製がしっかりしていて、丁度よくゆったりとしてきつくなく、工芸品的な感じがし、気に入っていた。お店には沢山の色のチェック、しかし型は1つというシャツ屋さんで、また近いうちに一着買ってもらおう、と軽い気で1つの色を選んだ。

 

が、程なくしてお店は撤退してしまい、手元に残ったのは一色だけ。毎年いつか同じ店に出会って、買い足したいと思いつつ、大事に着た。丈夫なシャツなのだけど、最近は洗濯をネットでしていた。

 

ついにこの前、襟にほつれと、穴が無数に開いているのを見つけてしまった。生地がもう弱ってしまった。

 

当時、母は仕事帰りに電話をくれ、いつも待ち合わせてファミレスで1つのカボチャプリン(巨大)を食べた。私はその日一日中コンビニに通い続けて食べ続けていたり、その胃の重さで食べていなかったりだったが、カボチャプリンだけは、儀式のような、日課のようなで、邪念を入れずに口に運んだ。

 

母も、なぜかわき目もふらず、席に着くなり、一日のルーチンのようにカボチャプリンを注文した。やがて期間限定のそのメニューはファミレスからなくなってしまい、私たちの日課も、何となくなくなってしまった。

 

そのシャツは、摂食障害で小枝のような腕の時も、ゾウのような腕の時も、まあそれなりに着られた。生地がしっかりとしていた半袖で、暑い外も、ファミレスの冷房も、体の中心は守られた。

 

今、子どもを産み育て、若い頃とは違う丸い膨れ方をし始めた体に、顔に、あまり似合わなくなってきているのを感じていた。

 

先日の洗濯で、ほつれてしまった。

 

母は年老い、我が子からはおばあちゃんと呼ばれるようになった。とっくに当時の事は忘れている様子だ。私も、平素あまり思い出さない。

 

穴が開いてしまった。もう着られないかも知れない。

 

今物干しに干している。買ってもらったたときのように、きれいな光の中にいる。